わかってる。
わかってるんだ。
唯一あたしを考えてくれてる存在。
兄貴の翔太郎。
こいつだけは分け隔てなく接してくれた事。
でももう翔太郎に頼ってらんないから。
翔太郎にも生活があるんだから。
「おっ、沙織ちゃーん、久しぶりだねぇ!」
行きつけのバー。
あたしの生きがいの店。
『マスター、今日はむかついてるから強いのくれない?』
「お子様に強いお酒は与えらんねーなぁ…♪」
『……だから、あたしはお子様じゃないの!もう二十歳!』
「…はいはい。」
コップに盛られたお酒からはつんっと刺激の強い匂いがした。
一人ってやっぱり楽。
誰の言葉も聞かなくていーんだもん。
ずっと一人でいたらこんなに捻くれた人間にならなくても良かったのにってつくづく思うんだ。
そう思うと体がどっと怠くなる。
もう誰の顔も見たくない。
ここにずっといたい。
あるいは…
…沙織…

