「ユースケ」 奈緒が俺を呼ぶ。 「早く来なよ。すっごい風気持ちいいよ」 「おー。今行く」 まるであの日の空みたいだ。 初めてここに入った日、そして奈緒と初めて会話した日を思い出した。 奈緒に初めて話しかけたのは、去年の五月だった。 去年の五月、といっても今はもう三月なので高一のこと。 きっかけは、俺が屋上に入ろうともくろんだことだ。