「聡、あのさ……」

「何?」

「うん……、昨日、楽屋に来てた子って……いっちーの知り合いの友達?」

「そうみたい」

「そうなんだ……。へぇ……」

「どうして?」

「何歳なの? 仕事は? どこで働いてるの?」

はるかは急に大声になり一気に喋った。

「どうしたんだよ」

聡は一人で冷静だ。

「別に……」

半ばムッとしながらコーヒーを口にしたはるかは、

「苦っ……」

「砂糖とミルクを入れないと飲めないくせに」

「どうせ、お子様ですから」

わざと怒ってみせる。別に腹が立たないことさえも、いたずらに頬を膨らせたりする。男の心理がわかっているのよと言わんばかりの演技を得意とする女だった。

しかも聡が自分のことを好きだと気づいているから余計に計算をする。毎朝ここのカフェに来てるのも聡が自分を好きだとわかってるから、わざと何も知らないふりして通い詰める。そうすれば聡も喜ぶと思ったから。

砂糖二杯を入れ、ミルクポットのミルクを全部入れてかき混ぜる。真っ白になったコーヒーを飲んでるはるかを見て聡は、

「甘いコーヒーが好きなはるかって可愛いと思うな」

「えっ?」

はるかは驚いて顔をあげた。