「はい」

「それじゃ、また」

……。



ツーッ、ツーッ、ツーッ……



「ありがとうございました……」

私は携帯を握りしめながら、携帯に向かって、ありがとうございました、と言っていた。

ふと気がつくと、緊張のあまり手が冷たくなっていた。電話を切って、段々と平常心が戻ってくる。心臓のドキドキも鎮まっていった。

私は冷蔵庫からジュースを取り出し、半一気した。

ふと思うと、聡に電話した理由が自分でもわからない。でもそれはたぶん、聡に電話すれば準平に近づけると思ったからかも知れない。心のものすごく奥の方に、そういう思いがあったのかも知れない。

電話を切ってから、急に虚しい気持ちになった。あんなに緊張していたのがバカくさく思えた。

私は携帯を見つめながら、情けない自分に、涙がこぼれた。