「はい、あーんして」
菜々は、一切れのピザを私の口の中に放り込んだ。あまり辛い物が得意じゃない私は、菜々が頼んだスパイシーなピザに鼻がツンときた。
「そういえば、ドラムの人、見た?」
「ドラム?」
「私の知り合いだよ~。ドラムの人見てねって言ったじゃな~い!」
「あ、ごめん。あんまりよく見れなかった」
「名前は覚えた?」
「名前……?」
「いっちー! もう! ちゃんと見ててって言ったのに」
「ごめんね~」
私は、ボーカルの男……準平以外の人はほとんど見てなかった。あまりの衝撃で他のメンバーをチェックする余裕はなかったから。金縛りにあったかのように準平から目を離せずにいたから。
菜々は、私が準平ばかりを見ていたなんて知るはずもない。
「あのバンドのメンバーってみんなカッコイイけどぉ、ボーカルの準平君もなかなかのイケメンだよねぇ」
「えっ? あぁ……うん」
「瞳は誰が好み?」
「別に……」
私は返答に困り下を向いた。

