オアシス





会場に着き、中へ。開演までまだ時間はあるのに、結構な人数が集まっていた。オールスタンディングで、私達はちょうど真ん中くらいの位置を陣取ることができた。後ろを見ると、次から次へと人が流れ込んでくる。

キョロキョロしている私に菜々は、

「アマチュアだけど、結構人気あるでしょ?」

「……うん、そうだね」

まだ開演前だが、もうすでに熱気でムンムンしていた。ただでさえ梅雨の時期なので余計キツかった。

瞬く間に会場は埋め尽くされ、私達は身動きもままならない状態に。前も後ろも右も左も女、女、女……。全体の九割は女と思われる。

シャンプーの匂いや香水の匂い……色々な〈匂い〉が入り交じっている。頭が痛くなるような状況で、足も痛いし、しゃがみたくなったが身動きができない。私は思わず菜々の肩に手を置いてしまった。

「大丈夫? もうすぐはじまるよ。水分補給しなよ」

会場内で強制的に買わされたミネラルウォーターを半一気した。もうすでに生ぬるくなっていて、おいしくなかった。