「簡単に名前と住所と携帯番号書いて下さい」

「はい……」

「烏龍茶どうぞ。飲みながらゆっくり書いていいですよ」


そう言って男性は、缶に入った烏龍茶を置いて出ていった。

私は、住所を何て書いていいか迷った。寝泊まりしているホテルの住所を書いていいものかどうか、迷っていた。迷ってる間に、さっきの女性が入ってくる。


「書けたかしら?」


紙面を覗き込む女性に、


「あの……私、今ビジネスホテルに泊まってるので住所がないんです」


正直に言う私に、


「じゃあ、そのホテルの住所を書いて」


と、女は笑顔で言った。

私はスラスラと書き終え、小さく息を吐いた。


この時点でもう夕方四時になろうとしていた。


私は、右も左もわからない未経験者で、

接客の流れのすべてを教え込まれた。

ここの女性店長に与えられた源氏名は


「朝比奈瞳」


だった。