実際にホテルに着いたのは夜10時近かった。肉体的はもちろん精神的にも疲れ果てていて、ほんの一瞬だけ東京が嫌いになった。初日からこんな感じでは先が思いやられる。

でも……でもそんなことは言ってられない。

ずっと憧れていた東京に来たのだから昨日のことは忘れよう。

嫌なことは、忘れてしまおう。

そして……親切にしてくれたあの男のことはわすれてはいけない。

私は、五階の部屋の窓から、肩を寄せるように立ち並んだ家々を見つめながら、そう考えていた。




………………




とにかく私にはお金がなかった。高校時代にバイトして貯めたお金と、母親にもらった五万円と……。だが、母親からもらった五万円はもうすでになくなった。なぜなら、しばらくの間はビジネスホテル暮らしをする予定でいるからまとめて一週間ぶんを払ってしまったから……。

早く仕事をさがさなくては……。でも東京に出てきて今日で二日目。