オアシス

人には言えない仕事かも知れないけど、その仕事を頑張って夢を叶えようとしている人もいる。なのに、私には何もない。だから、聞かないでほしい。そう祈った。


「社長には言わないでね。時期が来たら自分で言うから」

「わかってるよ。言うわけないじゃん」


私は、なぜか怒りがこみ上げてきた。


笑顔になろうとするがうまくできない。泣き笑いのような顔になっているのが自分でもわかるから下を向いた。ふと、笑い声が聞こえた。近くの席には女子高生のグループが陣取っている。育ちの悪そうな、レベルの低い会話と勘にさわる笑い声が店内に響いている。


「頑張って。夢、叶えてね」

「うん……ありがとう」

「やっぱり、この仕事してる人って何か夢とか目標とかある人なんだね。私は……なんもないや」

「……」

「あ、夢とか目標ない人いた。美月ちゃん。あの子、借金返す為にこの仕事やってるって言ってたな！ それから……レナちゃん。あの子さぁ、ホストに貢いでるんだよ。考えられないよねぇ！」