オアシス

なんか、悪い予感がしてたまらない。とてつもない胸騒ぎをおさえながら、ただひたすら電車が渋谷に着くのを待っている。


なんだろう……


菜々……どうしたの?


どうしたの? そう自分自身に問いかけるが、なんとなく答えがわかってるような感じがしていた。その答えは悪い答えだ。だからハズレてほしいと願うのだが、当たりの方が勝る気がして、頭がパンクしそうでクラクラした。


そして、電車は渋谷に滑り込んだ。たくさんの人間が一斉に降りた。次から次えと改札をくぐっていく、都会に慣れた無表情の者たちーー。


能面のような者たちの後ろを、同じ速さで歩き、外に出た。待ち合わせのカフェは駅近で五分もかからない。建物の二階で、外壁はガラス張りになっている。二階ごときでエレベーターは面倒だ。階段で二階まで上がり、店のドアを開けた。


いらっしゃいませ!


中堅クラスな感じの男性店員の声が響く。発声練習をしているかのような、よく通る声だ。私は店員を無視し、窓側に目をやると菜々の横顔が見えた。近づくと菜々が、あ〜瞳! と言って笑顔になる。だが、作り笑顔のように、右頬が引きつっている。おかしい。いつもの菜々じゃない。


私はメニューを広げた。菜々はまだ注文していなかった。私が来てから頼むつもりだったらしい。先ほどの男性店員が水を二つ持ってオーダーを取りにきた。私はアイスカフェオレを、菜々はアイスミルクティを頼んだ。ここまでの段階で私はひどく疲れてしまい、大きくため息をついた。菜々は何も言わない。