その時、


♪♪♪……


電話が鳴り、見ると菜々だった。


「はい」

『あ、瞳?』

「うん。どうしたの?」

『……ただ、なんとなく電話しただけ。なにやってるのかなーって』

「ずっと寝てたよ」

『そっか』

……。

「どうしたの? 菜々」

『……うん』

「なんかあったの?」

『ねぇ、これから会える?』

「うん、いいけど……」

『じゃあ、4時に、渋谷のいつものカフェで』

「うん、わかった」


電話を切ると、急いで準備をして家を出た。菜々は、これから私に会いたがっている。いつものようにカラオケに行ったり、スイーツを食べに行ったり……なのだろうか。だが、電話の様子がなんかおかしかった。神妙な感じがして、いつもの明るいハイテンションの菜々ではなかった。私は、そんな菜々のことをずっと気にしながら、溢れんばかりの電車のホームの最後尾に並んだ。 15時代という中途半端な時間帯なのに電車はかなり混んでいた。座席は空いておらず、私は、優先席のすぐ横の保護棒につかまりながら、ドアに映る自分を見ていた。