あーもう、どうしてこんなとき誰かいないのよ。

そのイライラのやり場がなくなり
私はどうしようもなく、
自分の肌に爪をたてた。

これが私の昔からの癖だった。


「ねえ。」


隣から落ち着いた低音が聞こえた。

視線だけをそちらにやる。
声の主は銀色のフレームの眼鏡をかけた男子だった。

第一印象は優等生みたいな人。

それに眼鏡外せば絶対美形。
眼鏡の奥に移る色素の薄い瞳をじっと横目で見て、もったいないと思った。