「あたしおかしかったんです、気にしないで下さい」
「平野さん、俺は」
「彼が戻ってきて、あたしも自分の気持ちが分かったんです。だから」
これ以上思い出したくない。
西島さんに一度抱いてしまった気持ちを
蒸し返したくなくて
「本当に、あたしってばおかしかったんです」
止めればいいものを
次から次へと余計な言葉が流れてくる。
「ならいいんだ」
「はい、それじゃあ失礼します」
頭を下げて反対を向いて階段を駆け上がる。
あたしってば、
本当にバカだ。
大人になっても
やる事は子供並み。
素直になればいいのに
突っ込んでいけばいいのに
それが出来ずにいるあたしは
昔からちっとも変ってない。


