バシバシと肩を叩かれる。
「あの人って?」
「ご来店されて注文していったの、あの人なんです!!」
「は?じゃあ」
「はい、あの人が間違ったんです!」
成程、だからあんなに怒ってるの?
「俺に恥をかかせおって!!お前死ぬ覚悟は出来てるんだろうな!!」
滝本様の怒鳴りが響き渡る。
そのおかげか、このフロアにいたお客様は一瞬で何処かに行ってしまったみたいだ。
「すいません、すいません!!」
土下座をしながら謝るその人。
「あの、滝本様」
取り合えず、商品を今野ともう一人の後輩、田崎に任せて足を進める。
「あぁ、あんたか、すまないな。こいつがったく、西島さんから言われなかったら
気付かなかったよ」
「え?西島さんが?」
「あぁ、もしかして代わりの人が来て間違えたんじゃないかって、んで確かめたらこうよ。本当にあんたには申し訳ない事をした」
深々とお辞儀をする滝本様。
「頭を上げて下さい。良かったです、誤解が解けて」
「あんた..」
「私、平野と申します。もし滝本様さえ宜しければこの件、どうぞ穏便にお済ませ下さいませ」
「しかし..」
「確かに今回は心ばかりで伺いましたが。元々滝本様はこの高越百貨店のお得意様。
そのような方に何もお調べもせず、確認もとらず勝手にやってしまったのは私共の
不手際のせいです。本当に申し訳ございません」


