休憩から戻ると、今野が泣きながらあたしに抱きついてくる。
ちょっとちょっと、今は仕事中だって。
「どうした、今野」
取り敢えず落ち着くように肩を叩くと
今野が我に返ってあたしから離れた。
「実はさっきお客様がご来店されたんですけど、一番高い商品を50箱。
6時までに用意しておけって言うんです!!」
「50箱ってそれまた随分な大口。しかも急だね」
「はい、それでのし紙にも指定かかってて」
「表書きは?」
「心ばかりなんですけど。それでもいいんですか?」
「んー。普通はあまり聞かないけどね。了解は得たの?」
「はい」
「よし。んじゃそれでいこう。そんで名前は?」
「はい。滝本様です」
「商品は..聞くまでもないね。他店から借りるよ。片っ端から電話して借りて」
「わかりました」
タイムリミットまであと5時間。
こりゃあ定時にあがれそうにないな。
そんなことを思いながら空箱の入っている棚に手をかけた。
「東京駅のお店から30箱、銀座から20。それと品物も全部借りることが出来たので行ってきます」
「はい、よろしく~」
今野を送り出してあたしも仕事にとりかかる。


