あたしだって、数ヶ月前までは普通にあんな風に彼氏がいた。
「大地、何してるかな」
ため息をつきながらも出てくる言葉はいつもそればかり。
プロポーズされて、結納まで交わしたのに
突然だった
ニューヨークに転勤になったって。
付いて来て欲しい、そう言われたけど。
一緒に行く勇気が持てなかった。
今から考えたらなんてバカなんだろうって思う。
でも今の仕事に誇りを持ってやってるし、辞めるっていう選択肢なんかなかった。
だからあたしは
「ごめん」
そう言って一緒に行く事を拒否した。
そして結婚の話は自然とご破算。
待ってて欲しい、
あのとき大地がそう言ってくれたらきっと待っていたかもしれない。
でも
大地はそんなこと、一言も言ってくれなかった。
「平野さぁん!!」


