「ちょっと、そのエレベーター待ってーーー!!」
右手を大きく伸ばしたけれど、無残にもその堅くて重たい扉は簡単に閉まった。
「やばいやばいー!朝礼始まっちゃうじゃん!!」
左手の腕時計の時間を見ると針は既に9時40分を差してる。
販売員の朝はものすごくハードだったりする。
「やばいね~~。こりゃあ走るしかないっしょ」
背中から友人の声がして振り返った。
「あんたのせいでしょ!!あ、あんたが朝っぱらから男を口説いてるから!」
叫びたくなくても自然と大声になってしまうのは業者さんが台車を忙しなく
動かしてるからじゃない。
「えーだったらあんただけ先に行けば良かったじゃん」
何であたしに言うのよ~
ぶすぅっと顔を膨らませて睨みつける。
その顔、他の男に通用出来てもあたしには無理なんだからね。
「仕方ない、走るか」
これ以上の口論は時間の無駄。
そう頭の中で結論付けて階段めがけて一気に走る。
「ちょっと、待って!!」
膝丈のワンピースの裾を持ち上げて千尋が後ろから付いてきた。
ったく、この大変な時にまでワンピースとは...
受付も大変だよなぁ~なんて思いながら売り場めがけて階段を下りる。