後ろから沙希の頭にタオルを乗せて、何も言わずにキッチンに向かう。 ……確か、引っ越した日に買ったココアの粉が何処かにあったはず。あ、あったあった。 「栄ちゃん?」 近くから聞こえた声に、棚に落としていた視線をそちらに移す。 タオルを被ったまま泣きそうな顔で立っている沙希と視線がぶつかった。 「どしたの。疲れてんでしょ、座っときな」 「……なんで、怒らないの?」 ちょうど20cm下からの上目使いにドキリと胸が鳴る。この角度に、俺が弱いことを彼女は知らない。