「…………あの、」





初めて塾をサボって夜の街をふらふら宛もなく歩いた。

一時間もしない内にやることがなくなって、仕方なく家の近くの公園で暇つぶし。


携帯を開くと、塾が終わるまであと二時間近くあって……初夏の夜は気温も程良く、いつの間にかベンチでうとうとしてしまったみたいだ。


「えっと、」


吹き付ける風に起こされて、目を開けた私は視線に入った男の子を見て固まった。


私の前にしゃがんでじっとこっちを見てくるその人は、同じ学校の制服を着ている。


綺麗に染まった茶色の髪と、色んなところに見え隠れするシルバーアクセサリー。

少しきつい目つき、彼の横にあった薄っぺらな鞄はボロボロだった。