「……砂希、か?」 低い、男の声だった。 それが、聞いたことのある声だとわかった瞬間、それにすがることしか考えがなかった。 パニック状態で、もう誰だか思い出す前に、助けを求めた。 『…あ、かる、い……所』 声が震えてうまくしゃべれない。 あぁもう。 なんで言葉が出てこないの……。 『……えっ?』 脇に手を入れられたかと思うと、フワッと体が浮いた。 ――トントントン。 どうやらあたしは担がれたようで、男は倉庫の2階へ上っていった。