「ちゃんと、怒れるじゃねーか。そうやって俺に怒鳴れたのに、どうして朝日たちにはぶつかっていけないだよ」


『梨沙や朝日と、一夜は同じじゃない。今のは……頭に血が上っただけ』



はやく解放して、と思いながら一夜を睨んだ。



「その目、ほっとけって言ってるんだろ?」

『……』


わかってるなら退いてよ。

だけど、やっぱり見透かされてることに腹が立って目を逸らした。



「ほうっておきたくないんだよ。……わかれよ」


『はぁ?無茶苦茶言わないで。わかるわけないでしょ』




――あたしにはこいつが一番わからない。



「お前、作り笑いしかしてない」

『なにそれ』



「怒りたい時は激怒して、泣きたい時は大泣きして、笑いたい時は腹の底から笑う。お前の場合は、これだけでいいんだ。やればできる。さっきだってできただろ?」


『……』



確かに、本気で怒鳴った。



……一夜の言葉は、あたしを怒らせるためにわざと?





「俺は、お前自身を見てみたいだけだ」



そう言って、一夜は出ていった。




…優しい、声だった。


ほとんどいつもと変わらないと思うけど、最後の一言は少しだけ優しく聞こえた。