『軽い気持ちで好きになったならこんな苦労してない!

何も知らないくせに偉そうに勝手なこと言うな。

あんたなんかに“惨め”だなんて言われたくない!!!』



呼吸するのも忘れて、一夜に怒鳴った。



初めて、こんなに声をあげて怒った。


初めて頭に血が上った。

初めてちょっとスッキリした。



……初めて、涙が出そうになった。



けれど、それは堪えた。

逆ギレして怒鳴って、しまいには泣くなんてカッコ悪すぎる。


もうこんなとこに居たくない。

一夜と話したくない。


教室を出ようとした、その時。




ダンッ




大きな音と大きな影にビクッと肩があがる。


一夜はあたしの顔の両サイドに手をついて、いつもとは違う鋭い目つきであたしを見た。


あたしは顔をあげて一夜を見返す。


『何。退いて』


なんで囲まれてんの。

あたしはやく違うところへ行きたい。



「逃げんな」


『逃げてなんかない』


「逃げてるだろ。今だって、ここからも逃げようとしてる」


一夜はあたしが返答しても、またすぐに返してくる。


そこにまたイラつきを感じる。