教室を出て、階段を降りて廊下を歩いて、階段をのぼって。
くそ、遠いんだよ図書室。
教室の棟とは1つ離れている棟の、一番上。
中等部と共同の、かなりでかい図書室。
『(……やっと着いた)』
まだ電気は戻っていなくて、当然図書室も真っ暗。
なんか、不気味だ。
人の声はまったくない。
『砂希、いるか?』
広い図書室に、俺の声だけが響いた。
『……いないのか?』
応答がないってことは、ここには俺だけしかいないことになる。
「いる……」
ポソリと、聞こえた声。
間違いなく砂希だ。
その声のしたほうへ近づいていく。
『どこだ?』
どこにも見当たらないんだけど。
さっき声したよな?
「ごめ、ん。ここ」
案外近くから、というかすぐ下から同じ声がした。
俺がしゃがんでみると。
『……なんで机の下なんだよ』
「え……わかんない」
『とりあえずそこから出ろ』
「うん」
――ゴンッ
「痛っ!」
……今絶対頭打ったな。
『砂希、動くなよ』
俺は砂希の肩に手をかけて、引っ張った。
次動けば、きっとまたどこかぶつける。
「……」
砂希は意外に静かだった。
そして。
『(……体重かけてる?)』
というより、力抜いてるのか。
…………弱ってるな、これは。
普段俺に寄りかかることなんてほとんどない。
『荷物は?』
「あ、その辺に」
砂希は、なぜか俺の手を引いて荷物の方へ。
俺はもう慣れたから、だいたい物の形は見える。
砂希が手探りで荷物を掴むってことは、机の下で目閉じてたってことだな。
