「もう、済んだか」
『うん』
「……お前の泣くポイントがよくわからない」
『泣いてない』
「……そういうことにしといてやるよ」
すると突然。
あたしの右手に、するりと一夜の手が絡まった。
びっくりして隣を見上げると。
「目構ってて転ぶなよ」
『……はい』
それから、そのあたしよりも少し低い体温を、ゆっくり受け入れた。
大きくて、少し細くて、しっかり包んでくれるその手。
嗚呼どうしよう。
――幸せ、だ。
『アイス、何がいいかな』
「俺は苺で朝日は抹茶」
『かなり意外』
「なんで」
『一夜が苺って』
「家族が苺好きだから」
『ふぅん』
「砂希は」
『チョコ。あたしと梨沙は絶対チョコ』
「ガキ」
『一夜に言われたくないピーマン嫌い』
「は、何だそれ。どこから仕入れた」
『とある感情的な子が勝手に』
「じゃあお前暗い所ダメじゃねえかよ」
『はぁ?何それ別にもう平気なんですけど』
「片割れからの情報に間違いはないと思うがな」
『り、さ、あいつ』
………………。
そして。
クスクスと、笑い始めたのはどちらからか。
あたしか、一夜か、あるいは同時か。
そんなのは、どうでもいいこと。
公園に帰れば、きっとあたしたちは“遅い!!”と怒られる。
でもそれはきっと笑いながら。
だからあえて。
――少しだけの遠回りは、黙っておこう。