――――それから数分して。



コンコンッ


「先生だけどはいっていい?」


「「どうぞ」」


保健室の先生が戻ってきた。

先生の仕事場はここなんだから、ノックする必要はない。


先生の気遣いが少し嬉しく感じた。



「砂希ちゃんね、きっと左手で止めたんだと思う」


先生は梨沙の隣に椅子を持ってきて座った。

そしてあたしの怪我のことについて、説明し始めた。


『止めた?』


「うん。階段から落ちるのを止めようとして左手を使ったんじゃないかな」



あぁ、それで痛かったのか。

あたしは納得できた。


「必死に止めようとした結果が今ある傷でね。でもそのおかげで頭は打ってないみたい」



先生の腕が伸びてきて、その短い10本の指があたしの頭全体を優しく撫でた。



どこも痛くないでしょ?

そう言ってふんわりと笑う先生。


『そ、うですね……』


頭はどこも居たくない。

ただ、先生みたいなタイプに初めて会ってちょっとどうしたらいいかわからなかっただけ。