「うん……なに?」
梨沙は、あたしの緊張を読み取ったのか、あたしの目を心配そうに見つめた。
あぁ、余計に緊張する。
怖い。
でも。
どんな答えでも、ちゃんと聞いて確かめなきゃいけない。
『……どうして、あたしが“離れていく”って思ったの?』
梨沙は、あたしから目線を少しさげてゆっくり口を開いた。
「……そのこと、ちゃんと言わなきゃ、とは前から思ってたの」
心臓が、ドクドクとうるさい。
「あたしずっと砂希の隣にいて、お互い大切な存在だって思ってた」
『あたしもだよ』
「うん、ありがと。
でね。
麻生くんと砂希が少しずつ打ち解けてくの見てて、あたし嬉しかった。
それで砂希の想いを聞いて、あたし安心しきってたんだけど……。
“悪くてただのクラスメイト”
って砂希が言って驚いた。麻生くん見てれば、そんなふうに思ってないくらいすぐにわかったもん。
麻生くんのことでさえ、砂希はそういうふうに考えてたら、あたしは?
砂希にとっては、どんなに大切な人でもそうやって自己完結して離れて行っちゃうんじゃないかって……」
梨沙は、言葉を止めた。
そしてあたしに視線を戻した。
「もっと欲張りになってよ……」
梨沙の切ない声が、あたしの耳に届く。
梨、沙。
そんなふうに、考えてたんだね。
知らなかった。
初めて聞いた。
『……欲張りになったら、せっかく今いる人たちが離れてくよ。
麻弥に見分けられる?
真奈美は?
それでがっかりするのは、梨沙だ』