声が震えないように。


なぜかたまった涙を、落とさないように。




『好きな男からの告白を、断るなんてバカな女じゃ、ないの』




精一杯、言ったつもり。


口元を上げて、笑えてたはず。


でも、やっぱり最後の方は震えが戻ってきてしまって。



そしたら一夜は、ふっと笑いをこぼした。


「砂希、らしいな」


クスクス笑いながら、あたしの腕を引っ張った。


上半身を起こされて、そのまま一夜の方へ引き寄せられた。



エリカ、じゃなくて、あたしが。





『……痛い』


一夜が引っ張ったの、左手だったんだけど。


抱きしめられた体制のまま、


「ムードねぇな」


と一夜は言った。



一夜の心臓の音が聞こえる。

微妙に、鼓動のスピードが速いような気もする。




これが夢じゃないことを祈った。



でもそれは、左手首の痛みが証明してくれた。



幸せ、だって本気で思った。