――ブー、ブー。


手に伝わるバイブで我に返った。


<砂希?>


あぁそうだった。

梨沙への返信してなかった。



《…麻弥を見てれば誰だってわかるでしょ?

きっと認める認めないは、梨沙が迷ってるだけなんだよ》




…こんなメール、あたしが梨沙を押してるみたいじゃん。


線の向こう側へ引っ張っていく麻弥を手伝ってるみたいじゃん。



“送信しました”



それでも勝手に動くこの指先。



<……そうだね>



梨沙がちいさく笑った気がした。



大丈夫。

麻弥だったら梨沙を受け入れてくれる。


そんな麻弥と一緒にいるんだから、菜々も。



そういう2人だから、梨沙と一緒にいるあたしも受け入れてくれそう。



だけど、そしたら見分けがつかなくなる。

せっかく梨沙が心を開きかけてるのに、そのことでまた逆戻り。



朝日の時とは違う。

昔から一緒に居て、見分けられる人じゃない。




――黒い気持ちに支配されていく。


気持ちが焦る。

不安になる。



………あたしってなんて嫌な人間なんだろう。



梨沙が行かないことを、


見分けられないことを、



―――望むなんて。