――ポンポン。
それは、突然。
……あたしの頭に優しい音。
でも、その音と共に感触もすぐに離れていく。
あたしは、チラッと目線をあげてみる。
ここにいるのは4人だけ。
誰かなんて、わかってるけど。
――わかってる、けど。
『……』
一夜。
声に出さずに、その名を呼んだ。
一夜と目は合わなかった。
まっすぐどこかを見たまま。
「じゃ、俺らこの後顧問に呼ばれてるし先行くな」
「うん、バイバイ」
梨沙と朝日の会話が聞こえて、あたしはサッと目線をはずした。
朝日と一夜は同じ方向へ歩いていく。
…あれ。
一夜が振り返る。
「じゃーな」
…あたしと一夜の目が、あった。
一夜が初めてしゃべった。
…今度はまっすぐあたしを見て。
なんだか、いきなりまっすぐすぎた目線とぶつかって、あたしはつい目をそらしてしまった。
…顔が、熱い。
のを認めたくない。
梨沙は、隣でニコニコしながら朝日を見送った。
それを見て、あたしは思う。
――本当に、笑えるようになったね
「砂希」
