体育館には、男子の騒がしい声だけが聞こえる。
女子はみんな驚いている。
それはあたしも同じ。
………誰も口を開かない。
「……どうして」
梨沙が一番に口を開いた。
「あたし、中等部の時からずっと福田くんが好きなの。でも、気付いたら貴女が隣にいた……」
麻弥は話しはじめた。
そういえば、朝日を好きな人なんてたくさんいるのなんて当たり前じゃん。
「何もしなかったのが悔しくて」
麻弥は目線を下げた。
そして、もう一度目線を戻して言った。
「もしあたしが負けたら、福田くんのこと諦める。
……別れても、二度と付き合うなとは言わないから。
私に、チャンスをちょうだい」
強い、目だった。
揺るぎのない、ぶれずに梨沙だけを見つめた瞳だった。
「……わかった。うける」
梨沙のしっかりとした声が、隣から聞こえた。
こんな声、初めて……。
『梨……』
―――ザワッッ
周りがいっきにうるさくなってあたしの声がかき消された。
そして、麻弥の周りには女子が集まっていた。
「麻弥すごい!!」
「よく言ったね麻弥!!」
「頑張ってね、応援してる!」
梨沙に勝負を切り出した麻弥の勇気を誉める声。
それは影で朝日を好きでいて、でも梨沙には何もできずにいた人たちだと思う。
―――ピーッ!!!
ちょうど、先生の笛が鳴った。
「時間来たから終了ー。各自教室もどれー」
ここでやっと男子も女子が騒がしいのに気付いたらしく、こっちを見てる。
「……で、何で勝負するの」
麻弥のまわりには女子がワイワイしてたせいか、梨沙は少し大きめの声をだした。
「バスケ。2対2の」
麻弥の言葉に、またまわりはざわざわする。
