「……俺も思った」
『なんだ、自覚してんじゃん』
「まあね」
…この問題をどうやって解決しようか。
予想以上に重たいものを話されて、どうすればいいかわからない。
でも、あたしが解決するのはあたしの問題。
麻生の昔のことは、麻生がなんとかしなきゃならない。
『アンタと一夜の同じ所はね、形は違うけど、不器用なところ』
「……何ソレ」
『一夜のいいところは…。えーっと、見えにくいけど優しさがあるところ』
ここにいる麻生は、いきなり何?、みたいな顔してる。
『アンタのいいところは、口が上手いところ。友達が多いところ。常に笑ってるところ』
思いつく限り、あげてみた。
麻生はちょっと驚いてる。
それから、
「嘘で手に入れたヤツなんて友達って言わないだろ」
と言った。
そして、あたしの後ろの濁った空を見た。
――わかってんじゃん
あたしも体を窓側に向けて、その濁った空を見上げた。
『あたしの過去と麻生の過去はまったく反対』
「…確かに」
『苦しみの重さなんて、天秤には掛けられないけど…』
『あたしは、比べてほしかった』
それはあたしにとって苦しいことになるかもしれない。
でも、それは梨沙かもしれない。
それでも、
見分けてもらえない世界から、
抜け出したかった。
ちゃんとあたしの存在を知ってほしかった。
神谷砂希、
という1人の人間を。
神谷梨沙、
という1人だけのあたしの姉を。
