麻生の話が終わるのを待っていたかのように、雨がぽつぽつと降り出した。



「これで、全部」


何も言わないあたしに、麻生はさっきの言葉をもう一度繰り返した。


『……うん』



コイツに、あんな重たい昔があったなんて思いもしなかった。


そしてその思いは今も、

……続いてる。


「俺が砂希ちゃんに近づいた理由、教えようか」


『……何』


雨の量は変わらず、静かな教室にぽつぽつと音が聞こえる。

教室が静かすぎるせいか、その音はよく響いていた。



「一夜を、苦しめたかっただけなんだよ」


麻生はそう言って、目線は落したまま悲しそうに笑った。


「俺だけが辛いのなんて不公平だろ、双子なのに」


…でもそれは、


『一夜だって辛かったはず』


麻生は目線をあたしに向けた。


『友達奪われるのなんて、いいものじゃないでしょ』


自分から離れるのと、

急に離れていくのじゃ、


全然ちがうと思う……。


「一夜も苦しめばいいんだよ」


『…あたし思ったんだけど、アンタもひねくれてるよ』


ついため息が漏れた。