『アンタさ、あの時正気じゃなかったでしょ』


「あはは、そうみたい」


麻生は苦笑いした。


『それはあたしのせい、なんでしょ?』

あの場にはあたししかいなかったし、これは100%そうだと思う。


「ちょっと砂希ちゃんの言葉にカッとなっちゃったんだよ」



『あたしが麻生静夜と一夜を比べたから?』


あたしの言葉に、麻生は目をちょっと大きくした。


「……うん、正解」


珍しく小さな声で、それから俯いた。


『……あたしと梨沙は、昔から見分けてもらえなかった。それが嫌で嫌で仕方なくて、ここまでひねくれたってわけ』


下を向いてる麻生に、あたしの、あたしと梨沙の過去を簡単に話した。


「ひねくれてる、って自分で認めてんだ」

麻生はこっち向かないけど。


『まぁね。もう性格悪いのなんてわかってるし』


「ふーん…」


『これがあたしの過去だけど』


今度はゆっくりと顔を上げた麻生。

その目は、あたしを見てた。


「俺のことも話せ、って?」

『ま、そういうこと』

「きっとつまんないよ?」

『それはアンタが決めることじゃない』


麻生は、フッと笑った。

そして、口を開く。


コイツの過去に何があったかはだいたいわかる。


アンタも、ひねくれてるよ充分。

不器用すぎ。


そこは一夜と似てる唯一の場所じゃないかな。