『心配してくれてありがとう。だけど、その優しさは他の子にあげて』



小声で言って、ニコっと笑いかけた。


きっともう何年も変わらないお得意の笑顔で。



そしてあたしは、梨沙の手を取って教室を出た。




ぎゅ。



梨沙があたしの手を強く握ってきた。



「砂希、ありがとう」


『どーいたしまして。あたしは、ずっと梨沙の味方だからね』


「うん、砂希だけは信じてる」



力無く笑いかけた梨沙を見て、あたしの心は罪悪感で押しつぶされそうだった。




“砂希だけは信じてる”




隠し事してて、ごめんね。

言えなくて、ごめんね。

嘘ついたままで、ごめんね。




だけど、梨沙の味方であることは嘘じゃないんだ。