「梨沙、落ち着け」


あたしを揺する梨沙の手を止めたのは翔だった。

いつの間にかゲームを止めて携帯をいじっていたらしく、翔の携帯が床に落ちていた。


翔はこうなることが分かっていてここにいたのかもしれない。


「砂希は不器用なんだよ。だから、そんなに責めんな」

「……」


あたしから梨沙の手が離れた。


翔の言葉は、あたしをフォローしてるのかしてないのかイマイチわかんない。


「悔しかったんだろ?砂希のことに気付けなかったことが」


「……うん」


梨沙の頬に、ツーっと雫が一筋流れた。


「だって、あたしのことばっかり気にしてくれてたのに、砂希の苦しい時にあたしは逆ギレしちゃうし、苦しめてばっかじゃん…」


『そんなに納得いかない…?』


「…自分のバカさに腹が立ってしょうがない」


梨沙はまた俯いた。


『じゃあ……』



――バチンッ


ドタッ


梨沙は尻もちをついて、左の頬を手でおさえてた。


「おい、砂希…」


翔もさすがに驚いてた。



――あたしが梨沙の頬をを平手打ちしたことに。