「なに、砂希」


あたしは自分の頭の中がいっぱいいっぱいで、周りを警戒していなかった。


梨沙は気付いてない。


さっき、小さな物音がしたことを。


『本当に付き合ってるの。嘘じゃない』


今度は、ちゃんと目を見て言った。

じゃないと、また疑われる。



「な…なんで?なんでアイツなの?」


梨沙は驚きながら、不満の言葉を発した。


『向こうから告白されて、あたしも別にいいかなって思ったから』


「じゃあ麻生くんは!?」


……梨沙の言う“麻生”は、たぶん一夜の事。


でもなんでここで一夜が出てくるの?


『麻生くんって、一夜のこと?』


知らないふりして聞いてみる。


「そうだよ!」

『なんで一夜が出てくるの?』


「だって…だって…、2人とも仲良かったじゃん!」


梨沙は言葉を詰まらせてた。

あたしの声は、どんどん冷たくなっていった。


『友情と恋愛は別物。当たり前でしょ?』


一夜とは“友情”ってほど仲が良かったわけじゃないのかもしれないけど。


「じゃあ麻生くん…麻生一夜くんとは友達なの?」


『…そうなんじゃない?それ以外に何かあるとしたら、ただのクラスメイトくらい』


心の隅っこに、なにかが引っかかってる感じがした。

自分で言った言葉が、すごく嫌だった。



本当はね?

知らないうちに、認めてたんだ。


一夜のこと。


強引だし、命令口調な時あるし、無愛想だけど…。


根は悪いやつじゃないって、認めてた。

一夜の隣は、温かいってことも知ったから。