あたしは、頭の上に温かい手の重みがあることに気付いた。



『い…ちや』


一夜と朝日は今来たらしい。


そういえば、あたしは教室の入り口で固まったまま動いてなかった。


「さっきから全然しゃべらなくて」


梨沙が一夜にあたしのことを説明した。


「だいじょぶかー?」


朝日も心配してくれた。


『あ、ご、ごめん。ちょっとボーっとしてた』


慌てて作り笑い。


それに気付いたらしい一夜はムッとする。


「砂希ってボーっとすると周りの声聞こえてないよね」


梨沙は気付かず、笑いながら言った。



『ごめん、あたし行くとこあるんだ』


「え、なんで?」


『えっと…告白の呼び出し』


とっさの嘘。

でもこれなら疑われない。


「あ、そうなんだ。ごめんね」


梨沙はショボンとした。


『謝らなくていいの!!じゃ』


あたしはそこから逃げるようにして出て行こうとした。


「1人で抱え込むなよ」


出て行く瞬間、一夜に耳元でボソッと言われた。


あたしは振り返って、軽くうなずいた。



そして、麻生の待つ空き教室へむかう…。