『はぁ…?』
たぶんあたしは、うんざりって顔してるんだと思う。
っていうか、何?
“砂希ちゃんでいいや”って。
上から目線でものを言って、何様のつもり?
「いーじゃん。砂希ちゃんフリーでしょ?」
「おい、静夜!」
「まぁまぁ、朝日は黙っててよ」
確かに朝日はもう何も言えない。
あたしは朝日にとってただの幼馴染であって、梨沙のように彼女ではない。
庇おうとしてくれるのは嬉しいけど、なんで朝日は静夜なんかに敵対心を持ってるんだろう。
「ね、どう?砂希ちゃん」
『…許可もなく下の名前で呼ばないで』
とりあえずあたしから出た言葉はそれしかなかった。
コイツから名前を呼ばれるのはなぜかすごく不愉快。
「じゃー、なんて呼べばいい?」
ひるむことなく、ニコニコしながら食いついてくる。
『呼ばないで』
冷たく返すと、さっき麻生静夜の周りに群がってた女子があたしを睨んでいた。
(何アレ、サイテー)
(静夜くんが話しかけてくれてるのに)
(偉そうに女王様気取ってんのよ)
『そんなに彼女がほしいなら、さっきからあたしの悪口言ってるそこのお姫様たちに頼めばいいじゃない』
そう言って、ニコッとみせる偽スマイル。
『梨沙、あたしちょっと出る』
あたしは梨沙にそう耳打ちした。
梨沙は、コクンと頷いてくれた。
そして、教室を出た。
「あ、ちょっと待ってよ」
あのしつこい男の声は無視した。