――次の日の朝。


やっぱり教室はうるさかった。



それは女子の声オンリー。


「静夜く~ん」
「お菓子食べる?」
「勉強教えて~」
「誕生日いつ?」


昨日からずっとだ。



あたしと梨沙は、“うっさいね”と目で会話して席に着いた。



……なぜかいきなり女子の声が止まる。



「おはよ、双子ちゃん」



あたしと梨沙の前に、うるさくしていた原因の男が現れた。


だから女子の声も止まったのか…。


とか言ってもやっぱり止まるのは一瞬だけで、今度は不満と嫉妬の声が飛び交う。



「「何の用」」


「相変わらず冷たいなぁ」


ヘラヘラと笑う麻生静夜。




「2人のどっちか、俺と付き合わない~?」




「「はぁ?」」


「「「「えぇぇぇーっ!!!」」」」



あたしと梨沙の声は、クラスの人たちにかき消された。


目の前の男の言葉に、クラスの男子も女子もみんな驚いている。



「ふざけんなよ静夜。梨沙は俺のだ。手ぇ出すな」



梨沙のすぐそばで、朝日の声が聞こえた。



「朝日…」


梨沙は顔を真っ赤にして驚いてたけど、やっぱり嬉しさは隠せてない。


「なんだよ…。朝日と梨沙ちゃんはくっついてたのか。残念」

「諦めろ、静夜」


「はいはい」


朝日は、“静夜”って呼び捨てにする。

つい一昨日転入してきたばかりで、朝日は全然関わってなかったのに。


たぶん、面識があるんだと思う。

一夜と朝日は親友。

その一夜の双子の兄。


でも、静夜にたいする朝日の警戒がある。




「じゃー砂希ちゃんでいいや。俺と付き合ってよ」