「へ…え……えぇっ…?!」



立ち上がった彼がいつのまにかあたしの身体を包んでいた。



たった一瞬だったけれど、しっかりとあたしの身体を抱きしめていた彼が少し離れて、フッと小さく微笑んだ。



「っ…」



ドクン…



漆黒の髪



綺麗な淡いブルーの瞳



少し薄めの唇



さっきよりも近くで見た彼の顔は思った以上に綺麗だった。



それに、まだ抱きしめられた時の強い腕の感触が残っていて、ドキドキが止まらない。



彼はたとえるなら、漆黒の黒猫かもしれない。



そんなことを思うと、ますます彼を直視出来なくなって、あたしは視線を下に反らす。



「なんで下を向いてるの?」


「え…えっと…」


「もっとご主人様の顔、よく見たいな。」


「ご、ご主人様…?」


「そう。僕を拾ってくれた優しいご主人様。」


「あ、あたしは…」



もう一度。



今度はさっきよりも強く抱きしめられて、あたしの心臓はパンクしそうになる。



彼の指があたしの髪を撫でて、そこに唇を落とした。



まるで髪の先まで神経が通っているかのように、あたしの身体は敏感に反応する。



「…可愛いね、ご主人様。」



ボッと顔が熱くなる。



彼の綺麗な顔があたしの視線を捕らえて



すぅ…と顔が近づいた。