「この人、ぼくのママ。」
「え?!マ…」
「あら、ずいぶん若いママね〜」
そりゃそうです。
あたし、まだ17ですから。
というか、ママじゃありませんから。
でもそんなことを、あたしの隣で嬉しそうにニコニコしている蒼空くんの前で言えるわけがない。
なんであたしがいきなりママなのかわからないけど…
こんなに嬉しそうなんだもん。
今日ぐらい良いよ…ね?
「きょうはいっぱいみるんだー♪ね?ママ」
「あ、うん。そうだね!」
「良かったわね〜いっぱい楽しんできてね。はい、チケット。」
「うん!ママいこ!」
か、可愛い…
あたしの手を握って走り出した蒼空くんは、さっきまでのとは似ても似つかないけど…
なんだかありのままの蒼空くん、って感じ。
きっと本当はいつも、こうしていたいんじゃないかな?
普通の5才の子と同じように、休日はママやパパと一緒にお出かけしたりして…
めいいっぱい遊びたいんじゃないかな?
あたしは、手を引きながら走る蒼空くんの後ろ姿を見ながら、そんなことを考えていた。

