「待っ、て…待ってよ……」



あたしは必死に掴んだ彼の手を離さないようにギュッと握る。



彼は戸惑ったような表情をしてから、少しだけあたしと距離をとって歩くのをやめた。



「ちょっとだけ…あなたが家を見つけるまでの間だけ……泊まっていけば…?」


「…いいの?」


「し、しょうがないじゃん…」



そう言うと、グッと腕をひかれて、彼の胸の中に納まってしまった。



慣れない行動にドキドキする。



でもそれ以上に自分で言ったセリフが恥ずかしくて、あたしは彼の胸に顔を埋めた。



そんなあたしを彼の大きな手が優しく撫でてくれる。



「…ありがとう」



そう小さく呟いた彼。



そして照れくさそうにあたしの頭をコツンと叩いた。



「いったぁ…」


「バーカ。」


「ば、ばか?!」


「嘘。…可愛いよ」


「っ〜!!も、もう本当に知らない…!」


「ごめんごめん。」



クスリと笑いながら、もう一度強く抱きしめられた。


その抱きしめられた手は、少しだけ冷たかった。