Fahrenheit -華氏-


「柏木さん……」


柏木さんの言葉にじーん…と来た。


俺をパートナーって認めてくれるんだね。


いっつも冷ややかな目で見られるけど、いっつも叱られてばかりだけど。


他人のことには我関せずかと思ってたけど(←ヒドイ)


でも、ちゃんと同じ目線で俺を(俺たちを)見てくれてたんだね。






現金なもので、柏木さんの一言で俺のやる気に火がついた。


「よしっ。がんばって売上げ伸ばしていこう!」


「はい!!」佐々木が俺に負けずに元気に返事をした。


「意気込みはいいですけど、空回りしないでくださいね」


と相変わらず冷たい突っ込みを入れたのは柏木さん。


何とでも言ってくれ。


俺は君がいれば、何でもできる気がするんだ。


何でも……





「神流部長、最近調子いいじゃないですか。どうしちゃったんです?」


ふいに俺の後ろで声がした。


最初に気付いたのは佐々木だった。佐々木は一瞬表情を歪めると、眉を潜めた。


このネチネチと嫌味ったらしい声は…


俺は振り返った。



出たな疫病神!





「村木次長」



俺の背後で腕を組んだ村木次長…いや、今は部長だっけかな。


相変わらず不健康そうな青白い顔で俺を見下ろしていた。