Fahrenheit -華氏-


バーで酒を飲みながら、楽しくお喋り……で、当然済むことはなく、俺たちはまるで恋人同士のように腕を絡み合わせ、


その下にある客室へ当然のことながら入った。





情事の後のベッドの下やシーツの上には、紫利さんの着ていた着物や帯が妖しく散らかっていた。


「和服……萌えるな」


金地に紫色の蝶の柄が入った帯を手にとって、俺はまじまじと見つめた。


「ホントね。啓人、いつもより激しかったわ」


裸の首筋に紫利さんの腕が巻きついてくる。


紫利さんは、俺を引っ張るようにベッドに戻した。


「たまにはピロートークでもしましょ?」


紫利さんは、そう言って俺の腕の中に潜り込んでくる。


紫利さんの火照った体温が心地よかった。


俺は彼女の解けた長い髪に、指を滑り込ませると、


「はぁ。やっぱ女性はこうでないとね。紫利さんがすっごく可愛く見えるよ」と思わず本音を呟いた。


「あら。妬けるわね。誰と比べてるのかしら?」


「ん~~笑わない女で、ついでに言うと謎多き女」


「でも美人なんでしょ?ついでに言うとあなたの好み」


紫利さんはくすくす笑った。


う……図星。