Fahrenheit -華氏-



『あなたたちとっても仲が良かったのよ。啓人くんなんて瑠華をお嫁さんにするって言ってたぐらいだから』


『で、あたしは何て?』


『あなたも啓人くんのお嫁さんになるって言ってたわよ。あのとき意味なんてわかってたのかしらねぇ』


ママはくすくす笑って、でも言葉を飲み込んだ。


あたしは実際に啓と再会する前にマックスと結婚したし、第一移り変わる環境と流れる時間で啓のことは忘れてしまっていた。


まさか19年の歳月を経て再会するとは、夢にも思わなかった。


運命っていうのかしらね。


好きよ。そう言う言葉は。


こう見えても一応女ですから。



あたしはタバコを灰皿で消すと、写真を伏せた。


グラスに入れたワイルドギースを一口飲み、ソファに横たわる。


一体どれぐらい飲んだのだろう。部屋に帰ってきてシャワーを浴び、ただ啓の連絡を待っていることが何だか自分らしくなくて、悔しくて、色々なことを考えたくなくて、あたしはひたすらアルコールを流し込んだ。


今頃になってようやく酔いがきたみたい。


写真を抱いて、目を閉じると啓との思い出の夢を見れそうだ。


啓がシャワーから上がってくるほんの少しの間だけ。




そう思って目を閉じた。


だけど浅い眠りの中、夢に見たのは―――






啓の夢ではなかった。