Fahrenheit -華氏-


近くにあるカラオケボックスに行こうということになり、店を出て俺たちはぞろぞろと移動した。


経理の瀬川が先頭にたち、その後をぞろぞろと女の子たちが続く。緑川も佐々木もそれぞれ経理の連中と楽しそうに喋りながら歩いている。


俺はその群からちょっと離れるとわざとゆっくりめで歩いた。


何故なら俺の隣には瑠華がいるから。


「なんかごめんね?カラオケなんて面倒くさいでしょ?」


俺は同じ歩調で歩く瑠華を見下ろした。


「ええ、まぁ面倒くさいですけど。付き合いも大事ですし」とはっきりと言う瑠華ちゃん。


「あのさ…カラオケ行ったあと…」


どこか飲みに行こう?そう誘いたかったけど、




TRRRR…

~♪




俺と瑠華の携帯がほぼ同時に鳴った。


俺たちは顔を見合わせ、それぞれに携帯を取り出しディスプレイを見ると同じように顔をしかめた。


中国からの国際電話だった。


「「仕事だ(です)」」


互いに苦笑して、それぞれ通話ボタンを押す。





「是。是神流株式会社的神流。(はい。神流株式会社の神流です)」

「Hello.This is Co.Kannna.This is Kashiwagi.(はい。こちら神流株式会社、柏木です)」