Fahrenheit -華氏-



トイレに立つ人間も多く、テーブルに戻ってきたとき、自分の席が勝手に移動させられてる。ってな具合で、男女入り乱れている。


合コンの席替えみたいだ。


「緑川さんは彼氏居るの?」


「どんな男がタイプ?」


とか聞いている経理の男たちは緑川をちやほや取り巻いている。瀬川もそのうちの一人だった。


緑川はさながらお姫様のようだ。当の本人も俺そっちのけで満足げだ。


瀬川頑張れ!そのまま緑川を捕まえておいてくれ!!





一方瑠華は……


「柏木補佐、飲み物のおかわりいかがですか?」


「柏木補佐、焼き鳥なんてどうです?俺、とりましょうか?」


とこちらもちやほや。その仲に佐々木も!って言うか、気遣われてる。


こっちはさながら女王様って感じだな。


俺は……と言うと、


「神流部長の隣、とっぴ♪」


「え~!マキずる~い!!」


「あたしも部長の隣~♪」とさりげなく腕を取ってくる大胆な女の子も。


まぁ、むっさい男共に囲まれてるよりはましだけどね。





でも、俺と瑠華は、テーブルの端と端に別れてしまった。


瑠華~~~!!


俺は彼女に手を伸ばしそうになって、慌てて抑えた。