Fahrenheit -華氏-




柏木さんはちょっとだけ苦笑いを漏らすと、無言で「分かりました?」と聞いた。






「ここまで話せばもうお気づきかと思いますが。





あたしの元夫は




マックス・ヴァレンタイン。





ヴァレンタイン財閥の総帥の次男です」





これですべての




辻褄が合った―――





あれほど柏木さんがヴァレンタインにこだわる理由。


いつも憎しみを込めた視線で追っていた事実。





ここまで来て俺はもう一つの事実を思い出した。



ファーレンハイト社。



それを買収したのもヴァレンタインだった。





夫だから?家族だから、妻を助けるために?





いや、違う。






助けるためなんかじゃない。





周到に仕組まれたM&Aだ。





あれは離婚の前なのか、それとも離婚のあとか。



前だったとしたら、それが理由で離婚に踏み切った?





後ならば……




それはヴァレンタインの柏木さんに対する復讐―――?






どっちにしろ最低だな。