ま、まさか綾子が“あいつ”を……?


ありえねぇだろ…


この間だって喧嘩してたし。


それに“あいつ”は同期だし…って関係ないか。桐島も同期だ。


でも桐島がダメだったからって“あいつ”に転ぶ??


あいつだけは(俺もだけど)男に見えないって言ってたよな??





俺が言うのもなんだが、綾子は決して気が多い女じゃない。


どっちかって言うとガードが固い方で、それなりに美人でモテるのに、振られた男は数知れず。





まさか……ね。



そんなことを考えながらも、俺たちは二人で近くの居酒屋に移動した。


奥まった座敷に落ち着くと、ビールと軽いつまみを頼んで当たり障りのない会話をしていた。


話したいこと、が何なのか知りたかったが綾子から切り出してくれない限り、俺から聞くことはできない。


おかげさまで、いつの間にか親父と柏木さんが食事に出かけたということは、忘れかけていた。



そのうちに


「お待たせ」


と背後から声が聞こえ、振り返るとぎこちなく笑顔を浮かべた裕二が登場した。





半分…いや半分以上想像していたことだし、このメンバーで裕二が合流することに別に違和感はないけど。



だけど俺は綾子の言う「話したいこと」の内容に薄々気が付いていた。