Fahrenheit -華氏-


俺が何て返していいのか、言葉に詰まっていると


「……ごめんなさい。部長も疲れてますよね」


柏木さんがちょっと気遣かうように眉を寄せた。






No!




全然疲れていません。むしろ今の柏木さんの発言で元気過ぎるほど元気になりました!!



色んな場所が………








俺は柏木さんが戻したレアチーズケーキを手に取り、彼女に笑いかけた。


「半分こしよっ?」


柏木さんがちょっとはにかんだように笑う。


くぅーーー!!!


全く!たまらんぜっ!!


柏木さんのプリンも彼女の手の中から取ると、俺はレジに向かおうとした。


「待ってください!」


俺の上着の裾をふいに掴まれて、俺は振り返った。


「あの…さっき奢ってもらったので、ここはあたしが」


そう言って慌ててバッグの中から財布を取り出す。


「え?いいよ。大した額じゃないし」


「良くありません。さっきは部長が奢ってくれた上にあたしの一方的な話まで聞いてもらったので、そのお礼という意味で」


お礼なら体でしてほしいな…


とイケナイ考えを浮かべながらも、俺は彼女の厚意に甘えることにした。



柏木さんが会計をしているときも彼女の後ろにぴったりと寄り添い、俺は周りの客たちから彼女をガードしていた。


と言っても、客はあの若い男二人組みだけだけど。


きょろきょろと辺りを見渡してると、またもあの二人組みをばっちり目が合った。


性懲りもなく、また柏木さんを狙っていやがったのか。





ガルル…


俺は歯を剥き出したい勢いで、そいつらに一瞥してやった。